Manhattan Portage APPLEBUM

Longing For New York City

”New York Tough”をブランドのフィロソフィーとして掲げ、
本物のメッセンジャーの為のメッセンジャーバッグを作り始めることで、
83年ニューヨークでスタートしたManhattan Portage。

ヒップホップをはじめとするニューヨーク発祥のカルチャーに影響を受け、
大人も着こなせるカジュアルな洋服を東京で05年より作り続けているAPPLEBUM。

90年代、日本にニューヨークのヒップホップ / ブラックカルチャーを数多く伝えた、
KING OF DIGGIN’ ことDJ MURO。

ニューヨークという街をルーツとして持つこの3者による
コラボレーションアイテムがリリースされることを記念して、
MUROに90年代のニューヨークの思い出を振り返ってもらった。

1 Leaving For New York City

「初めてニューヨークに行ったのは、93年の夏でした。Tommy Boyからリリースされた『Planet Rap』っていう、世界のラップアーティストを集めてコンピレーションを作る企画に参加したとき、夏にニューヨークで開催されていたNew Music Seminarというミュージックコンベンションでライブをやらないか、というお誘いが来て、Microphone Pagerの皆で行ったんですよね。願ったり叶ったりな出来事でした。当時、自分は<STARRICH>っていうお店で働いていたんですけど、そんなに休みとれる訳ないだろ、行くんだったら買付して来いって言われて、初めての買付もすることになったんです。その頃って、言ったらまだ<TIMBERLAND>くらいしかインポートブランドのお店もなくて。<GAP>も路面店は無かったかな。XLというサイズも入って来ていなかったので、買ってくればすぐに売れてという現象が起きていた。だから“じゃあ来週からまた飛んでよ~”みたいな、無茶な生活がそこから始まりましたね(笑)」

“ニューヨークのお土産話を聞くことで、
自分の中でニューヨークに対する
想像が膨らんでいたんですよね”

「当時はまだ自分の周りでも頻繁にニューヨークに行っている人は余りいなかったんですけど、たまたまMicrophone PagerのMasaoは、91、2年くらいからニューヨークに行くようになっていて。まだインターネットも無く、アーティストのミュージックビデオや雑誌で情報を得ていた時代だったので、Masaoからのニューヨークのお土産話を聞くことで、自分の中でニューヨークに対する想像が膨らんでいたんですよね」

DJ MURO × MANHATTAN PORTAGE × APPLEBUM

2 Enter Into New York City

“自由さが魅力的だったんですかね”

「ニューヨークのことは、80年代くらいから先輩に”ラップとジャズが合う街”という風に聞かされていたんですけど、本当にその通りの街でしたね。ニューヨークという別の国のように感じました。英語も、色んな国の人たちが集まってるので、全然正しい英語じゃないというか、基準がないというか。そこが魅力的だったんですよね。日本みたいに、一つ例があって、それに向かって書くという習字みたいな事じゃなくて、初めから個性が育つ感じと言うか、自由ですかね。自由さが魅力的だったんですかね」

「93年に初めてニューヨークに行って、その後に、“もっと好きなものだけ買って来たくない?” と引き抜かれて<Still Diggin’>がオープンしたんですよね。そこからは1週間向こうに行って、1週間東京にいてとか、3泊5日で2日空いてまたニューヨークに行って、3泊5日で帰って来るみたいな(笑)。無茶苦茶な感じでした。でも、それくらい行き来していると、もう意識もなくなって来るんですよね(笑)。月5回とかありましたね。”どういうことなんだろう?”って,親からも心配されるくらいでした(笑)」

「ニューヨークに行ってみると、意外と東京もニューヨークも街としての速度感みたいなものは似ていたんですよね。皆急いでる感じで、街も目まぐるしい早さがありましたし。ファッションに関しても、ニューヨークで流行っているファッションをーー少しは遅れるんですけどーーほぼタイムラグ無しに紹介するようなお店も増えていましたしね。その頃は、バンダナやアクセサリー1つでも、買って来たものはすぐに売れちゃうみたいな状況だったんですよ。カート4台を手持ちで持って帰って来ることもありました。当時はそういう風に買い付けに行ってる人が本当に沢山いたんですよ。スニーカーをいつも大量に買い付けて、持って帰って来ている女性の方もいたりして」

  • KANGOL

    「当時の物って色々処分しちゃったんですけど、これはなんか手放せないんで持ってるんですよ。まだMade in Englandの頃の物なんですよ。凄く昔からあるニューヨークの帽子屋さんで買い付けました。当時<KANGOL>は日本に入って来てたんですけど、この辺のアイテムは結局日本に入って来なくて。しかも、この耳付きってのがなかなかレアで。耳を垂らして、後ろ向きに被る人ってのも多かったですね」

  • Phillies Blunt

    「これは普通にハーレムの路面店で売っていたりするようなやつなんですけど、葉巻の<Phillies Blunt>のブートアイテムですね。アーティストのブートTシャツみたいなものだと思うんですけど、これは何個売ったかわからないですね(笑)。通算だったら1,000個以上売ってると思います。この葉巻の皮っていうのも、ヒップホップ的なお洒落でしたね。地下鉄のあちこちに葉巻の中身が落っこちてるっていう光景が懐かしいです」

Keep On Diggin’ 365 Days

3 Experience in New York City

「当時のニューヨークでの思い出というと、やはりラジオですかね。一晩中どこもかしこもラジオが掛かっていて、そのラジオがイケてたってのは本当に驚きでしたね。Funkmaster FlexみたいなDJがメインのチャンネルもあれば、<The Stretch Armstrong & Bobbito Show>みたいな結構アングラな人たちを紹介するような番組もあったし。僕も96年に初めて、Tommy Boyのインターンをやりながら自分でもDJをやってたMayhemっていう子に、カレッジラジオに呼んでもらったんです。そこで初めてDJ Spinnaに会いました。本当はそのときAkinyeleとSadat Xがゲストだったらしいんですけど、それがキャンセルになってJigmastasになったタイミングだったんですよね」

「ニューヨークに行く頻度が高まっていたので、現地のヒップホップシーンとの繋がりも自然と強くなってきましたね。中でも、やっぱりLord FinesseとかPete Rockたちは本当によくしてくれましたね。自分の家にも呼んでくれて、知らないレコードを教えてくれたり、これからリリースするビートを聞かせてくれたりとか。だから、後々日本に呼べたことは凄く嬉しかったです。一緒に作品を作ることが出来たのも嬉しいし。年齢が近いから、今でも似たようなレコードの話が出来る友人ですね」

“一晩中どこもかしこもラジオがやってて、
ラジオがイケてたってのは
本当に驚きでしたね”

“荷物を持つのが
本当に嫌いなので(笑)”

「90年代当時の東京ではそこまでメッセンジャーバッグを持っている人は居なかったけど、ニューヨークではやっぱりメッセンジャーの人たちが皆持っていましたよね。僕は荷物を持つのが本当に嫌いなので(笑)、小振りのポーチとかを持っていましたね。今でも、どこに行くのでも最低限の荷物で、という感じなので、今回実現したようなサイズ感は最高なんですよね。ちょうどヘッドフォンも入るんです。ヘッドフォン、カートリッジが入る良い大きさのカバンてなかなかなくて」

「当時のニューヨークの楽曲の中で印象深い楽曲はFat Joeの”Flow Joe”ですかね。リアルタイムだったんで、Fat Joeは本当に自分の中で盛り上がってましたね(笑)。これが次来る! って感じで、ニューヨークではプロモ盤がいっぱい展開されていて。ブロンクスでしか売っていないミックステープなんかもあって。D.I.T.C.のミックステープはそういうのが多かったんですよ。バックワイルドの(ミックステープ)は結構上の方に行かないと手に入らないとか。ミックステープですよね、その頃は。本当に凄かったです。Fat JoeのマネージャーのMacchoっていう子が、ブロンクスで<Full Court Athletics>っていうお店をやっていて、よく買い付けしてました。たまにFat Joeがお店に来て、ラップを聞いてくれるんですよ。あと、彼の友達が店にきて盛り上がっていているうちに、Fat Joe本人も<560>っていうお店をオープンして、お店に行くと、コラボレーションのTシャツを”作っといたぞ”みたいな感じで用意されていたりして(笑)。良い思い出ですね。そこで一度Ice Tにラップを聞いてもらったことがあるんです。お店の中に凄い行列が出来てて、”なんの集まりだ?”と思ったら、Ice Tがレジのところにいて、ラップを聞いてもらいたい人たちが列になっていて(笑)。僕、海外アーティストの前座を初めてやったのがIce Tだったんですよ。Krush Posseの頃だったんですけど、その時のことを向こうも覚えてくれていて」

FAT JOE “FLOW JOE”

Pete Rock & CL Smooth “They Reminisce Over You (T.R.O.Y.)”

Lord Finesse “Vinyl Athletes featuring DJ Muro”

REBELLIOUS, INVENTIVE AND HUMOROUS

4 Back To Japan

“愛着のあるニューヨークっていうと、
やはり90年代のあの頃なんですよね”

「<SAVAGE>を自分でオープンさせたくらいから、それまでみたいなペースでニューヨークには行かなくなったんですよね。2000年過ぎくらいですかね。下の子達が買い付けの仕事を覚えてくれて、任せられるようになって来たので。ちょうどその頃から、少しずつレコード屋さんもパタパタと閉まり出したり、友達が少しニューヨークから離れたところに引っ越しちゃったりとか、自分自身も新譜をがむしゃらに掛けたりしなくなっちゃったんで、90年代とは自分の中では全然違うんですよね、見え方が。自分にとっての愛着のあるニューヨークっていうと、やはり90年代のあの頃なんです」

「当時のニューヨークからファッション的に最も影響を受けた点は、なんといっても、オーバーサイズってところなんですよね。当時はXLというサイズが日本に無かったので。あとは、腰履きや、ジャケットを裏表で着たり、帽子を後ろ前にしたりっていうような着崩しですかね。そういうのがたまらなかったですね。ニューヨークの人たちの、当たり前が嫌いっていうスタンスには本当に影響を受けましたね」

90’s NY HIP HOP Playlist By APPLEBUM

Item Information

Manhattan Portage × APPLEBUM × MURO
Casual Messenger Bag JR

MP1605JRMRXAPL / Black / ¥12,000(税抜)

Direction / Shintaro Kurokawa
Photography / cherry chill will
Words & Interview / Maruro Yamashita
Design / Toshihumi Kiuchi